――そして、遂に文化祭当日。インターネットでの広報活動が功を奏してか、かなり遠くの方からも
お客が会場に集まった。辺りで耳を澄ましてみるとハンドルネームと思しき名前が飛び交っている。
「いやぁ、やっぱり北海道からはツライですよー」
なんて言葉も聞こえる。
「・・・・・・ごめんね」
ぽつりと囁いた言葉は、誰の耳にも聞こえなかった。
「・・・・・・遅いっ!!」
文化祭実行委員の太田センパイが叫ぶ。
「菜々ちゃんはまだこないのか?!」
そう、もう既に最終的な打ち合わせが終わっていなければならない時間なのに、まだ本人が現れないのだ。
「千都瀬センパイとの連絡は・・・?」
亮が小声で聞いてみる。
「あいつのケイタイに何度鳴らしても出ないんだ!」
絶叫して、頭を抱えてしゃがみこむ。
「ああああぁっ!どーすりゃいいんだよぉぉっ!」
と、まるでタイミングを計ったように、ドアが開いた。
「お・・・遅くなりました」
入って来たのはあたしと、似合わないサングラスをかけてはいるが、瑞樹菜々その人だった。
「菜々ちゃん!」
たまらず太田センパイが叫ぶ。
「どーしたの?!いやそれより、もう時間がない。・・・・・・すぐ始めるぞ!」
「は・・・はいっ!!」
かくして、文化祭の最後を飾る、瑞希菜々ミニコンサートがスタートした。
――一方、舞台袖の一角では――
「・・・彼女、大丈夫かなぁ・・・?」
やがて、音楽が始まり照明が輝く。だが、いつまで経っても歌い始める気配がなかった。
「どしたんでしょうね・・・一体」
「知らん!」
『・・・・・・すぅ。』
と、大きく息を吸ってあたしは歌い始めた。
『かんぱぁ〜〜〜い!』
「いやぁ、なんとかなりましたねぇ〜、センパイ」
「ああ、もうどーなる事かと思ったけどなんとかなるもんだなぁ〜」
コンサートの成功を祝って、少し早い打ち上げ。もちろん、ビールやおつまみの類は屋台村から余ったものを
回収・・・いやいや、ありがたく頂いてきたものだ。
まずまずの成果が出せて、みんな和気藹々と飲んでいる。
「せぇ〜んぱぁ〜い、なぁ〜んで今日ぉはぁ〜、遅れてぇ来たんですぅかぁ〜?」
「お亮・・・、いいからあんたは涼んできなさい」
・・・すっかり飲まれている者もここにいるが。
「ええぇ〜っ、なぁ〜んであたしだけ除け者ですぅかぁ〜」
「あぁ、ほらしっかりしなさいって、もう・・・」
「ほえぇ〜、センパイいつ着替えたんですかぁ〜?」
「いや、あの、あたし菜々の方ですけど・・・」
「ふぇ?なぁ〜に言ってるんですかぁ、せんぱぁ〜い」
「だから、あのね」
すっかりお酒に飲まれたお亮に菜々さんはすっかり手を焼いている。
「ああっ、菜々さん、あたしが連れてきますから・・・」
「ふぁ〜?!センパイが増えてるぅ〜?!」
「そのネタはもお、いいってば・・・」
すこし広めのバルコニーまで菜々さんと二人がかりで連れ出し、ベンチに横になった途端、お亮は寝息を
立て始めてしまった。
「もう・・・。風邪ひくぞ、こんな所で寝たら」
そういって、菜々さんは来ていたジャケットを懸けてあげる。
「・・・ホントに今日はごめんね。無理言っちゃって」
「ううん、でも結構楽しかったよ。・・・結構怖かったけど」
そう、ステージの上に立った感想をあたしは素直に言った。
「でもよくバレなかったよね〜」
「ほんと。太田センパイ、ファンだったらしいから、絶対バレると思ったんだけど」
「えっ?そーなんだ」
「そーそー。お亮が言ってたけど『菜々さんを呼ぶ』って最後まで頑張ってたの、センパイなんだって」
「そんなにすごいファンなんだ〜。そんな風には見えなかったんだけど」
「ほら、好きな子にイジワルしたりする事ってあるでしょ?アレと同じなんでしょ、きっと」
「あはははっ、そーかもね」
「あ、そーいえばさ、去年なんかもっとすごかったんだよ」
「え?なになに・・・?」
こうして、ずっとバルコニーで二人話し込んだまま、秋の夜長は更けていったのだった・・・。
...FIN
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