「薬がない?!

     

『えー、この米騒動ならぬカゼ薬騒動は一向に冷めやらぬ模様で・・・・・・』

『ご覧くださいっ!この行列っ!!この人たち全てカゼ薬を買うために何十メートルも・・・・・・』

『なお、中国政府は漢方薬の採取量減少により国外輸出も間々ならない状況で・・・・・・』

 ぶつっ、っと俺はテレビを消した。こないだからず〜〜〜〜っっとこんな話題ばっかりだ。おまけに

こんな時に限って滅多に風邪をひいたことのない俺が38度2分とゆー、ろくでもない風邪を拗らしてし

まった。

 今思えば俺が馬鹿だった。てっきり買い置きのパブロンかカコナールか葛根湯があるとおもって安心

して風邪ひいてみりゃぁ、あるのは正露丸とオロナインだけ。これで俺にどーしろってんだ?

 ・・・・・・まぁ、一人でごちった所でどーにもならんが。

「ひぃぇぇっくしょんんっっ!!」

 さっきよりますます寒気がしてきた。確か何かのマンガで「寒気を感じるのは熱が上がってくる証拠」

なんてのを読んだことがある。俺の脳裏に嫌〜な予感が浮かんだ。いくらなんでも一人暮らしのアパート

の中で風邪で死んじまって春まで発見されず終い、なんてのは御免だ。兎にも角にも俺はありったけの

服を着込めるだけ着込んでミシュランマンみてーな情けない格好で風邪薬を探しに出かけた。しかし、

やっぱり俺は甘かった。

 駅前通りの薬屋はとっくの昔に風邪薬はもちろん、ご丁寧にうがい薬やマスクの類に至るあらゆる風邪

グッズが売り切れていた。

 しかもそれは何もそこだけに限った事じゃなく、薬屋という薬屋は全て何と内科医にまで風邪薬がない

ときた。

 もはや俺には歩き回る根性はとっくに無くなっていた。それどころか、目の前が真っ暗になってきて、

俺の頭に不吉な言葉が駆け巡った・・・・・・・・・・・・。

      

 ・・・・・・遠くで小刻みに電子音がなっている・・・・・・。

     

 薄っすらと、まだ朧げな俺の意識の中に白衣を着た男の姿が飛び込んできた。

     

 ・・・・・・助かったのか・・・・・・????

    

『今日、路上で風邪薬を求めて肺炎を起こし病院に運ばれた患者が1000人を超えましたが、いずれも死亡

に至った患者はおらず・・・・・・』

『・・・・・・この一連の騒ぎは、政府はアメリカからの援助によって急速に収縮しつつあり・・・・・・』

『・・・・・・続いての話題は広がる情報汚染について・・・・・・』

   

 ・・・・・・もうろうとした俺の頭の上を無責任なテレビの音だけが通りすぎていった・・・・・・

FIN...

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